中村城跡(為松公園)・郷土博物館

中村城(為松城)なかむらじょう(ためまつじょう)は四万十市中村市街地の北西部にある標高約90mの丘陵地(為松山)に為松氏が築いた連立式の平山城です。

中村城跡 郷土資料館模擬天守から望む市街地

かつて丘陵地には「東城」、「為松城」、「御城(詰)」、「今城」と呼ばれる4つの城郭が連立し、総称して「中村城」と呼ばれています。

江戸期に廃城となり、現在城跡は為松公園として整備され、遺構として土塁、石垣、曲輪(くるわ)が残されています。

「二の丸」跡地には模擬天守の形をした四万十市郷土博物館が建てられ、四万十市(土佐中村)に関する歴史・文化を知ることができます。

中村城跡 二の丸跡地の郷土資料館

春には為松公園にて500本の桜が咲き誇り四万十市屈指の「桜の名所」としても知られています。

住所 アクセス

土佐くろしお鉄道中村駅から徒歩約30分。まちバス利用であれば、四万十市文化センターで下車して徒歩5分。

基本情報

・中村城(為松公園)

住所 〒787-0005 高知県四万十市中村2356
開園時間 特になし
入場料 無料
別名 為松城
様式 連立式の平山城
築城者 為松氏
築城年 不明
歴代城主 為松氏、土佐一条氏、長宗我部氏、中村藩山内氏
主な遺構 土塁、石垣、曲輪(くるわ)
イベント 3月~4月ごろに咲く500本の桜(為松公園内)

・四万十市郷土博物館

住所 〒787-0005 高知県四万十市中村2356 二の丸跡地
電話 0880-35-4096
入館料 大人440(350)円/高校生170(130)円
()内は20人以上の団体割引料金
年間パスポート 大人1320円/高校生520円
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 毎週水曜日
みどころ 四万十市の歴史、文化、民族、生物等の資料や文化財

※詳細は公式サイトにてご確認ください

中村小性町に着くと案内板が立てられています。公園内は分かり易く整備されているので迷うことはないでしょう。

中村城跡案内版
中村城の歴史

中村城はもともとこの地を支配していた豪族、為松氏が丘陵地(為松山頂)に城と居館を造っていたといわれていますが、その築城年や城の規模など詳細はわかっていません。

1468(応仁2)年に応仁の乱で荒れ果てた京を離れ、一条氏が土佐中村に下向すると為松氏は一条家の配下となり後に四家老の1人となっています。

1589(天正17)年の長宗我部地検帳によると、為松山の頂には「東城」、「為松城」、「御城(詰)」、「今城」と呼ばれる4つの城が存在(中ノ森を合わせると5つ)してことが分かっています。また各城は独立していたわけではなく、連立式の城郭だったと考えられています。

中村城跡 歴史が刻まれた石

1574(天正2)年に一条氏4代目当主の一条兼定を国外へ追放した長宗我部元親は中村城を占拠、翌年に豊後臼杵から戻った兼定と渡川(四万十川)で戦って勝利し、そのまま長宗我部氏による中村の統治が続きます。

1600(慶長5)年に長宗我部氏が没落して、遠江国(静岡県)から山内一豊が入国すると、弟の康豊を中村城に入城させます。

1613(慶長18)年に2代藩主山内政豊により城の再築が行われますが、2年後に幕府が制定した一国一城令により中村城は破却してしまいます。

中村城跡 模擬天守=郷土博物館

1914(大正3)年に当時の中村町が、城のあった為松山を公園として整備、1965(昭和40)年の調査で埋もれていた石垣の一部を発見、城跡としての価値も高め現在に至っています。

見どころ

市街から続く中村城跡(為松公園)までは舗装された緩やかな坂道となっており、上り易くなっています。

中村城跡までの舗装路

途中には史跡として、「樋口慎吾の記念碑」や「南海大地震記念碑」、「幸徳秋水絶筆の碑」など中村に纏わる石碑が立ち並びます。

中村城跡 幸徳秋水絶筆の碑

当時、曲輪※(くるわ)や城郭のつなぎの部分には敵の侵入を防ぐ目的で「堀切」とよばれる空濠(からぼり)がいくつも造られたようです。
※曲輪とは城郭周辺に築く石垣や土塁のこと

中村城跡 堀切

為松城が築かれていた場所のちょうど北側下、慶長期の山内時代に築かれたとされる石垣が残されています。

中村城跡 堀切

中村城のちょうど中心に位置するのは、一条時代には為松氏、藩政時代には山内氏が居城として利用されていたと考えられる為松城跡です。

中村城跡 為松城跡地

現在この場所は遊具などが設置され、市民の憩いの場として日中は親子連れで賑わっています。

園内の北西には「中ノ森」と呼ばれた本丸よりも一段低くなった場所で、現在は駐車場になっています。

この中ノ森から望む景観は、かつての「詰(御城詰)※」や「今城」が築かれた場所でしたが、現在は見る影もなくなっています。
※詰(つめ)とは家臣が城の中で控える場所

中村城跡 全体図 中村城跡 中ノ森中ノ森から望む風景

園内西側にある「桜の段」と呼ばれる場所では、毎年春に500本が満開を迎え多くの人々で賑わう「桜の名所」となっています。

中村城跡 桜の段

また、夜にはつるされたボンボリに灯がともり幽玄な夜桜のライトアップも楽しめます。

「二の丸跡」には現在、天守の形をした四万十市立郷土博物館が建っています。(入館は有料)

2019年2月にリニューアルオープンして、土佐中村の歴史、文化、人物にまつわる貴重な資料が展示されています。

中村城跡 四万十市立郷土博物館

一通り市の歴史や文化の知識に触れることで、実際に史跡を目の前にした時の感動も変わってくることでしょう。

博物館6階にある展望室からは、360°四万十市のパノラマが開け、観光では人気ある場所の1つともなっています。

四万十市立郷土博物館 6階展望室

西の方角に四万十川が流れ、東にある後川で挟まれた碁盤の目の美しい町並み「土佐の小京都」を一番堪能できる場所にもなっています。

為松山頂に築かれた中村城は、かつての豪族為松氏から始まり土佐一条氏、長宗我部氏、山内氏とめまぐるしく入れ替わる城主と共に時代に翻弄されながら今に至っています。

往時に築かれた城郭はもう見ることはできませんが、城跡を訪れてその遺構を見てまわると、いにしえの時代に生きた人々の世界観や思いが伝わってくるのを実感します。

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